ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る を読んで

ベルナール・アルノー

ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る

今世紀最大のブランドコングロマリット、LVMHを築き上げたベルナール・アルノーのインタビュー本。10年前の本ですが、LVMHは、未だに拡大を続けているハイブランド業界のモンスター企業です。

最高位かつ安定したブランドを複数ジャンルで抱えるなんて羨ましいかぎり。今の時代、ブランド認知度でトップはアップルやグーグルだと思います。でも、趣向の多様化や個人の好みが重視される時代、LOUIS VITTONやドンペリのような、しっかりとした歴史があり、高い品質を維持し続けてきたという確固たる裏付けがあるのは、圧倒的にLVMHでしょう。アップルは、スティーブ・ジョブズがいい感じにブランド構築してきましたが、i phone 5cとかいう、ブランドイメージを食いつぶしてく方向に進みつつあります。

さらに、人々の趣向が多様化され、かつ常に新しい価値や美意識が求められるファッション業界のような特性をもった世界においては、そのようなブランドは今後生まれにくいのではないかとも思います。だからこそ、なおさら、既にブランドを築いてしまったものは、絶対的な安定した恩恵を受け続け、圧倒的に優位なポジションにいることができるという流れになると思います。圧倒的なトップブランドが一つあり、その下は小さいブランドが乱立し、生まれては消えていくという流れを繰り返すようなイメージです。

本書にもありますが、一度その優位なポジションを得てしまえば、安定して資金を得る事ができるので、新しいブランド開発や事業、試みにどんどん投資くることができ、常に業界を創造的に引っ張っていく事ができる。

小さい企業が先進的な試みを行いつづけるには、相当な資金体力が必要です。だけど、ファッション業界というものは、常に創造と破壊を繰り返していかなければ、生き残っていけない。ましてや、業界を引っ張っていく存在にはなれない。

ゆえに、最高位にポジションされているブランドリーダーだけが、永続的に創造と破壊を繰り返す事ができ、仮に創造的な価値を提供できるブランドやデザイナーが現れたとしても、一時の栄華に終わってしまう。創造し、自らを破壊するか、安定を求め陳腐化し、ゆっくりと滅んでいく事になる。

ブランド業界においては、ポジション優位をとることは死活問題なのです。それも圧倒的なナンバーワンを目指さなければならない。ナンバーワン以外は、敗者ともいえる。一度ナンバーワンになったら、安定です。人もナンバーワンに優秀な人材が集まってくる。

本書は、当時盛んだった、アルノー本人やLVMHにまつわる噂や誤解に、対応するため発表されたらしい。フランス人らしく、事業についての具体的な話はほぼされておらず、理念や思想、政治観、メセナ、ライフスタイルなど、思考の深さや人間性、活動の正当性や貢献性を問うような構成になっている。

もしかすると裏で本人以外の人にかなり加筆してもらっているのかもしれない。しかし、読んで現れてくる本人の印象は、真面目かつ実直。ブランドが持つ華やかさとは少し距離をもった、創造的な美を愛する真面目な理系人といったイメージだ。こんな人が、あのブランド帝国を支えているとは。ファッションブランドという創造と破壊を繰り返す世界で、ともすると振り回され、混沌の渦の中に落ちていってしまうような業界で、舵をとっていくには、こういう人こそ、適任なのかもしれない。

ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る

・理系で真面目に勉強しまくる。

・27歳から、一族経営の建築会社の社長となる。

・アメリカにて異なった企業文化を知る

・絶対的なブランドをもった、資金難で経営破綻寸前の企業をみつける。

・頼りになる銀行マンに、アメリカ時代の飯友達を介して出会う。事業を見込んでもらう。

・フランス時代がブランド産業を強化してくという風潮があった。

・金ではなく、ナンバーワンブランドを作り上げたい。

・ナンバーワンで居る事で、スタッフは常に上昇志向を持つ事になる。

・ブランド会社は経営難が多い、買収しやすい。

・創造性はマーケティングに優先する。創造性がブランドをブランドたらしめる。

・美や品質を愛する価値観を損なわないために、社会活動をする。会社のため。

・人は敏感に感じる。細かいところまで整合してなければならない。

・いい商品ありき、マーケはいい商品の後押しをするだけ。ダメな商品はマーケするだけ悪影響。

<ベルナール・アルノー>

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